マナーは相手への思いやりから始まる
素敵なレストランや料亭に招かれたとき、あるいは友人と少し背伸びをしてランチを楽しむとき、ふと自分の振る舞いが正しいのか不安になったことはありませんか。テーブルマナーと聞くと、堅苦しいルールの羅列のように感じてしまう方も多いかもしれません。しかし、マナーの本質はルールを完璧に守ることではなく、一緒に食事をする相手や、料理を作ってくれたシェフ、サービスをしてくれるスタッフへの思いやりにあります。
美しい所作は、その場にいる全員が心地よく過ごすための潤滑油のようなものです。カトラリーの順番を間違えないことよりも、音を立てずにきれいに食べることや、笑顔で会話を楽しむことのほうが、実は大切だったりします。もちろん、基本的なルールを知っていることは自信につながります。自信があれば心に余裕が生まれ、その余裕があなたをより魅力的な大人の女性に見せてくれるはずです。
東京には世界中から素晴らしいレストランが集まっています。美味しい料理をただ味わうだけでなく、その空間や時間そのものを楽しむために、最低限知っておきたいポイントをおさらいしておきましょう。決して難しいことではありません。少しの意識で、あなたの食事姿はぐっと洗練されたものになります。
西洋料理で押さえておきたい振る舞い
フレンチやイタリアンなどの西洋料理では、カトラリーの使い方が気になるところです。基本的には外側に並んでいるものから順に使っていけば間違いありません。もし間違えてしまっても、スタッフがさりげなく新しいものを持ってきてくれるので、慌てずに食事を続けましょう。食事中にナイフとフォークを置くときはハの字に、食べ終わったら揃えて皿の右下に置くのが合図です。
意外と見落としがちなのがナプキンの扱いです。ナプキンは服を汚さないためだけでなく、口元や指先を拭くために用意されています。自分のハンカチを使うのは、お店のナプキンが汚くて使えないというサインになってしまうことがあるため避けましょう。口を拭くときは、ナプキンを二つ折りにした内側を使うと、汚れた部分が外から見えずスマートです。
また、食事中に中座する場合、ナプキンは椅子の上に置きます。そして食事がすべて終わり席を立つときは、きれいに畳まずにテーブルの上に置くのがマナーです。きっちりと畳んでしまうと、料理が美味しくなかったというメッセージになってしまうと言われています。あえて少し崩して置くことで、料理への満足感を表現するという粋な習慣です。このように、西洋料理のマナーには一つひとつに意味があり、それを知ることで食事の時間がより深いものになります。
日本料理で大切にしたい箸使いと所作
和食においては、箸使いが所作の美しさを決定づけます。箸先を汚すのは三センチ程度にとどめると上品に見えます。迷い箸や刺し箸といった嫌い箸を避けるのはもちろんですが、意外とやってしまいがちなのが手皿です。左手を添えて食べる仕草は丁寧に見えるかもしれませんが、実はマナー違反とされています。汁気のあるものや不安定な料理を食べるときは、手を受け皿にするのではなく、小皿や懐紙を使うのが正しい作法です。
また、日本料理ならではの美点として、器を持って食べることが挙げられます。お茶碗やお椀はもちろん、手のひらに収まるサイズの小鉢などは、持ち上げて食べることで背筋が伸び、美しい姿勢を保つことができます。ただし、刺身の盛り合わせなどの大きな皿や、平たい皿は持ち上げないので注意が必要です。器の扱い一つで、食事の風景はガラリと変わります。
そして忘れてはならないのが、感謝の心を表す言葉です。いただきます、ごちそうさまという言葉は、食材の命や作り手の労力に対する敬意の表れです。声に出さなくても、手を合わせて心の中で唱えるだけで、食事に向き合う姿勢が整います。東京の喧騒の中でも、こうした静かな心を忘れずに食事を楽しむことこそが、大人の女性の嗜みと言えるのではないでしょうか。

